HOUSE OF NODA
野田の離れ
離れることでつなげてく
そもそも「離れ」とは、母屋と一体でありながらも、独立した建物である。ゆえに、母屋の付属的な存在を超えた自立性を持たせることで、敷地全体や周辺風景の一部であるという全体感を生み出すことを目指した。人の営みはもちろん、豊かな自然とも調和を図るために、長期的な目線においての「持続していく適切な距離感」の調整を深慮した。あえて「離れ」ることを実践することで、より精神性がつながっていくと私は考える。
敷地は静岡県中部、市内の駅からほんの10分ほど車を走らせた街と山間部の境目にある。穏やかな川沿いの住まいは農家が多く、母屋+離れ、農業用倉庫や小屋を持つ。大抵の母屋は立派であるが、離れはトタン屋根の簡素なものが目立ち、今回の建主宅も同様であった。敷地内の離れを建て替え、息子家族が新たに住む計画をした。
独立した世帯が住むにあたり、建て替え前との使い方を見直した。主な生活空間を2階に持ち上げることで初めて適度に開口部を設けることができる、重厚な母屋とは対照的で浮遊感や軽やかさがある空間が実現した。一方、グランドレベルの1階はプライバシーを保持するため適度に閉じることを採用しながらも、一部をピロティにすることで敷地内での共同作業場として開放した。
家の背骨である棟を中心にシンメトリーに開口部や出入口を配置することで、物理性を超えた関係性を持つ起点となる。意識が中心に向くようになり、面積以上の広がりを感じられるほか、2階の窓からは敷地内の風景ではなく、川向うの山々の景色を切り取るように見せることで独立した暮らしを実感できるよう促した。
母屋と離れを行き来するためには、一度外にでる必要がある。元からあった土間作業スペースを修復し、都度外履きになる不便さを解消するためにブリッジを渡すことにした。まるで川を渡るかのように、少しの意識の切り替えを持たせることが、二世帯が暮らすというつながりを生みながらも適度な距離を持つキーとなる。
今回新築した離れのシンプルなトタンの切妻屋根は、周辺の作業小屋の佇まいにも近しく、しかしながら少し現代的な様相を見せてくれる。取り壊した元々の離れは、増改築を繰り返しながら大切に使われていた築100年ほどの建物であった。母屋は建て替えから40年ほどで、次はまた母屋の番かもしれない。交互にゆっくりとカタチを変えていく集落の長い循環に、今回の建築が参加できたことをうれしく思う。
Location: | Shizuoka |
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Category: | Residence |
Structure: | Wooden / Two-story |
Structural Design: | UNNO STRUCTURAL CONSULTANT |
Year: | 2024 |
Construction: | Nakata Kohmuten |
Photography: | KUSUNOSE TOMOYUKI |