道悦の住宅改修

改修の際に考えることは、今までこの住宅が経てきた時間とどう向き合うかです。
時の経過は素材に宿り、空間に漂います。
今回増改築するにあたり
空間の質を継承しながら新しい家族の時間を塗り重ねるにはどうあるべきかを考えました。
既存を覆い隠したり、既存との素材を合わせる「調和」ではなく
素材・空間の質・構成として明確な「介入」を示すことが今までの時間を尊重することになる
と考えました。

数十年の間に何層にも重ねられた仕上材を剥がすと既存の木架構が現れました。
大きな屋根を支える合理的な骨格の強さを感じると同時に
木造架構の森を自由に動き回る生活のリズムを感じました。
増築部分においてはモルタルで構成し、その上に梁を架け、屋根をのせ、既存との接続の痕跡を明確に示しています。
木構造とは異なるマッシブな質量が醸し出す安心感と木造架構の軽快さを共存させています。
外から見ると暗闇のようにみえる入口は中から見ると外の明るさがより際立ちます。
そこから見える情景は、かつて古代の人々が洞窟の中からぼんやりと外を眺めていただろう
景色の移ろいと変わらないかもしれません。
闇の中に記憶を宿し継承する、普遍的な人々の感覚に訴える建築を目指しました。

_建築概要

  • 所在地: 静岡県島田市
  • 主要用途: 専用住宅(リノベーション)
  • 構造規模: 木造2階
  • 敷地面積: 223㎡
  • 延床面積: 94.15㎡
  • 竣工: 2017年7月
  • 施工: (株)ファンコレクティブ
  • 写真: 良知慎也